The Beatles「Yesterday」|夢で聴いたメロディーは、本当に自分の曲?

名曲のひみつ / ハードロック / 1965年

The Beatles「Yesterday」|夢で聴いたメロディーは、本当に自分の曲?

この曲、どんな物語?

美しいメロディーを聴くと、初めから完成された歌のように思えます。でもこの曲には、作った本人が「どこかで聴いたことがあるのでは」と悩んだ、少し不思議な話があります。

目が覚めたらメロディーがあった

ポール・マッカートニーは、眠っている間にメロディーを思いついたという話を何度もしています。目覚めたあと、ピアノで確かめたそうです。ただ、あまりにも自然なメロディーだったため、自分で作ったのか、それとも誰かの曲を覚えていただけなのかが心配になりました。いつも自由に曲を書いている人でも、こんなふうに疑うことがあるのです。

最初の歌詞は食べ物だった

まだ正式な歌詞がなかったころ、ポールは音の数を確かめるために「スクランブルド・エッグ」という仮の言葉を使っていたことで知られています。朝ごはんのような言葉が、あとから切ない恋の歌に変わったというわけです。メロディーが先にでき、歌詞があとから生まれる曲もあります。作曲には決まった順番がないのですね。

4人組なのに、歌うのは1人

ビートルズは4人組のバンドですが、この曲の録音ではポールの歌とアコースティックギターに、弦楽四重奏が重ねられました。弦楽四重奏とは、バイオリン2本、ビオラ、チェロの4つの弦楽器による小さな合奏のこと。大きなオーケストラではなく、少人数の音だからこそ、歌の近くでそっと響きます。バンドの曲でも、必ず全員が演奏しなければならないわけではありません。

弦楽器が入ると何が変わる?

はじめはギターの弦をはじく音と歌が近くに聞こえます。途中から弦楽器の長く伸びる音が加わると、景色が少し広がったように感じませんか。ギターはひとつずつ音を鳴らしやすく、バイオリンは音をつなげて長く伸ばせます。違う楽器を組み合わせると、同じメロディーでも気持ちが変わって聞こえます。

小さな曲が世界へ

派手なドラムも大きなギターの音もないのに、この曲は長く愛されてきました。たくさんの音があることと、心に残ることは別なのかもしれません。改めて聴くときは、メロディーだけを口ずさんでみてください。それから弦楽器がどこで加わるかを探してみましょう。シンプルな曲の中にも、いろいろな発見があります。

小さな編成が持つ強さ

バンドの曲なのに、この録音には大きなドラムの音が目立ちません。声とギターを中心に、弦楽器がそっと彩りを添えています。楽器の数が少ないと、ひとつひとつの音の表情がよく見えます。歌い始めの声と、後ろで響く弦の音は、同じ気持ちを別の言葉で伝えているようです。ビートルズの音楽には、大勢で勢いよく鳴らす曲もあれば、こうして身近に語りかける曲もあります。初めて聴く人には、歌の切れ目にどんな音が残るかを確かめてほしい。小さな音に耳を澄ませる楽しさを教えてくれる一曲です。

聴き方のヒント

まずは何も考えずに聴いて、次は記事で気になった音を探してみよう。知ってから聴くと、同じ曲にも新しい表情が見つかります。

第11版:もう一度聴いて発見すること

バンドなのに一人の声が中心

ビートルズの公式ページによると、この録音に演奏者として参加したビートルズのメンバーはポール・マッカートニーだけ。そこへ弦楽四重奏が加わりました。四人組のバンドが、いつも四人で演奏しなくてもいいという発想です。公式曲紹介にもその事情が記されています。

歌声とアコースティックギターを先に聴き、次に弦楽器が登場する場所を探してみましょう。弦が入ると、寂しい気持ちが少し広い景色のように感じられます。

参考資料