The Beatles「Something」から学ぶ音楽理論|半音で変わるコードと美しい転調の秘密
The Beatles(ビートルズ)の「Something」は、ジョージ・ハリスンが作曲した美しいバラードです。
この曲には、音楽理論を学ぶうえで面白い仕組みがたくさん隠されています。
特に注目したいのが、C → Cmaj7 → C7というコード進行です。
コードの名前は少ししか変わらないのに、聴こえ方は大きく変化します。
さらに途中では、CメジャーからAメジャーへ転調します。
今回は、コードの構成音とスケールを比較しながら、この曲の仕組みを見ていきましょう。
今回の楽曲
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| アーティスト | The Beatles |
| 曲名 | Something |
| 作詞・作曲 | George Harrison |
| 収録アルバム | Abbey Road |
| 発表年 | 1969年 |
| 基本のキー | Cメジャー |
| 中間部のキー | Aメジャー |
| 拍子 | 4/4 |
| 学べる理論 | セブンスコード、転調、セカンダリードミナント、半音進行 |
公式ミュージックビデオ
アルバムジャケット
ジャケットは公式サイトで確認できます。画像の転載は行っていません。
曲のコード進行
最初に、曲の構成を見てみましょう。
| 曲の部分 | 主なコード進行 | 特徴 |
|---|---|---|
| イントロ | F → Eb → G → C | メロディとベースが反対方向に動く |
| Aメロ | C → Cmaj7 → C7 → F | セブンスの音が半音ずつ下がる |
| Aメロ後半 | D → G → Am | セカンダリードミナントと意外な着地 |
| Aメロ終盤 | Am → Am(maj7) → Am7 → D7 | 下降する音を利用 |
| 中間部 | A → Amaj7 → F#m → A/E | Aメジャーへ転調 |
| 中間部後半 | D → G → A | GがAへ向かう |
| ギターソロ | CメジャーのAメロ進行を基本に展開 | コード構成音を活用 |
| エンディング | F → Eb → G → C | 冒頭の動きに戻る |
※主要なコードを取り出した学習用の表です。実際の演奏では転回形、経過音、テンションなどが加わります。
また、Amの後の下降進行には、Am/G#やAbaugなど、資料や分析方法による表記の違いがあります。
CメジャーとAメジャーのスケール比較
この曲の基本となるのはCメジャースケールです。
しかし、中間部ではAメジャーに転調します。
まずは、この2つの音階を比較してみましょう。
| 音の順番 | Cメジャー | Aメジャー |
|---|---|---|
| 1度 | C | A |
| 2度 | D | B |
| 3度 | E | C# |
| 4度 | F | D |
| 5度 | G | E |
| 6度 | A | F# |
| 7度 | B | G# |
Cメジャーにはシャープがありません。
一方、AメジャーにはC#・F#・G#の3つのシャープがあります。
この違いによって、使いやすいコードやメロディの音も変わります。
ただし、転調したからといって、すべての音が入れ替わるわけではありません。
2つのスケールには共通する音もあります。
ダイアトニックコードを比較しよう
ダイアトニックコードとは、ひとつの音階に含まれる音を組み合わせた基本のコードです。
| 度数 | Cメジャー | Aメジャー |
|---|---|---|
| I | C | A |
| ii | Dm | Bm |
| iii | Em | C#m |
| IV | F | D |
| V | G | E |
| vi | Am | F#m |
| vii° | Bdim | G#dim |
どちらもメジャースケールなので、コードの種類が並ぶ順番は同じです。
CメジャーのIはC、AメジャーのIはAになります。
この表を理解すると、曲の途中でキーが変わっても、コードがどのような役割を持っているか考えやすくなります。
この曲の面白いところ① C・Cmaj7・C7の違い
この曲を特徴づけている進行がこちらです。
C → Cmaj7 → C7 → F
それぞれのコードの構成音を比べてみましょう。
| コード | 構成音 | 特徴 |
|---|---|---|
| C | C E G | 基本のメジャーコード |
| Cmaj7 | C E G B | Bが加わる |
| C7 | C E G Bb | BがBbへ下がる |
| F | F A C | 次の落ち着き先 |
注目したいのは、Cmaj7とC7の違いです。
Cmaj7にはB、C7にはBbが含まれています。
つまり、7度の音が半音下がるだけで、コードの性格が変わるのです。
さらにCを基準にすると、次のような下降する音の流れが生まれます。
C → B → Bb → A
最後のAはFコードの構成音です。
このように、それぞれのコードをなめらかにつなぐ音の動きを、ボイスリーディングと呼びます。
ギターなら、コードチェンジのときにどの指の音が動いているかを確認すると面白いですよ。
この曲の面白いところ② C7とD7の正体
「Something」には、C7やD7といったセブンスコードが登場します。
Cメジャーの基本的なダイアトニックコードには、どちらも含まれません。
では、なぜ自然に聴こえるのでしょうか。
| コード | 構成音 | 次に向かうコード | 理論上の働き |
|---|---|---|---|
| C7 | C E G Bb | F | Fへ向かうドミナント |
| D7 | D F# A C | G | Gへ向かうドミナント |
| G7 | G B D F | C | Cメジャー本来のドミナント |
C7からFへ進む場合、C7はFに向かうドミナントとして働きます。
D7からGへ進む場合も同じです。
このようなコードをセカンダリードミナントと呼びます。
本来のキーとは別のコードに向かう力を、一時的に借りてくる仕組みです。
ただし、C7やD7が登場したからといって、必ず転調したわけではありません。
この曲では、Cメジャーの中に少し違う色を加える役割として聴くことができます。
この曲の面白いところ③ Amから始まる半音下降
Aメロの終盤にも、面白い音の動きがあります。
Am → Am(maj7) → Am7 → D7
この進行では、Amの構成音であるA・C・Eを中心に、上の音が変化します。
| コード | 構成音 | 変化する音 |
|---|---|---|
| Am | A C E | A |
| Am(maj7) | A C E G# | G# |
| Am7 | A C E G | G |
| D7 | D F# A C | F# |
A → G# → G → F#。
半音ずつ下がる動きが見えてきます。
このような進行は、クリシェと呼ばれることがあります。
同じような和音を保ちながら、特定の音を少しずつ変化させる手法です。
ただし、原曲のこの部分はベースラインの下降が特に重要です。
Am/G#、Am/G、D7/F#といったオンコード表記で説明されることもあります。
また、AbaugやC/Gを用いる和声分析もあります。
表記は違っても、半音で下がる音の流れに注目すると、曲の仕組みを理解しやすくなります。
この曲の面白いところ④ CメジャーからAメジャーへの転調
「Something」の中間部では、曲の雰囲気が変わります。
それまでのCメジャーから、Aメジャーへ転調するためです。
| 比較 | Aメロ | 中間部 |
|---|---|---|
| キー | Cメジャー | Aメジャー |
| 主役のコード | C | A |
| 主なコード | C・F・G・Am | A・F#m・D・G |
| 注目点 | 半音下降とセブンスコード | 転調とベースの下降 |
中間部では、A → A/G# → F#m → A/Eという下降するベースの動きも聴かれます。
そして、Gコードが登場するところも面白いポイントです。
GはAメジャーのダイアトニックコードには含まれません。
このGは、Aミクソリディアンなどの響きと関連づけて考えることもできます。
| スケール | 構成音 |
|---|---|
| Aメジャー | A B C# D E F# G# |
| Aミクソリディアン | A B C# D E F# G |
違いは7番目の音です。
G#がGに下がることで、ロックらしい少し開放的な響きが生まれます。
ただし、中間部全体がAミクソリディアンという意味ではありません。
基本はAメジャーで、Gコードが変化を与えていると考えるとわかりやすいでしょう。
よくある質問 Q&A
Q1. Cmaj7とC7はどちらもCの仲間ですか?
はい。どちらもC・E・Gを含むコードですが、7番目の音が違います。Cmaj7はB、C7はBbを使います。
Q2. セカンダリードミナントは難しい理論ですか?
仕組みはそれほど難しくありません。例えばD7 → Gなら、Gに向かう力を強めていると考えてみましょう。
Q3. 転調とは何ですか?
曲の途中で、音楽の中心となるキーが変わることです。この曲ではCメジャーからAメジャーに変わり、その後Cメジャーに戻ります。
Q4. クリシェはどんな曲にも使えますか?
さまざまな曲で使える方法です。コードの中の1音やベース音を半音ずつ動かすと、なめらかな変化を作れます。
Q5. この曲をギターで練習するなら、どこから始めますか?
まずC → Cmaj7 → C7 → Fをゆっくり弾いてみましょう。コード全体の響きと、C → B → Bb → Aという音の動きを意識するのがおすすめです。
今回のレッスンのまとめ
「Something」には、音楽理論を学ぶための大切な仕組みがいくつも使われています。
- C → Cmaj7 → C7では、半音の動きでコードの響きが変わる。
- C7 → F、D7 → Gでは、セカンダリードミナントの働きが聴ける。
- Amから始まる下降進行では、クリシェやベースラインの工夫が学べる。
- CメジャーからAメジャーへの転調によって、曲の表情が変化する。
この曲から学べるのは、難しいコードをたくさん使うことだけが、音楽を豊かにする方法ではないということです。
たった1音の変化が、メロディやコードの印象を大きく変えることがあります。
ぜひ実際にギターやピアノで弾いて、その違いを耳で確かめてみてください。
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