The Beatles「Here Comes the Sun」|春の庭で生まれた、心を明るくする歌

名曲のひみつ / british-rock / 1969年|アルバム『Abbey Road』

The Beatles「Here Comes the Sun」|春の庭で生まれた、心を明るくする歌

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仕事を休んだ日に生まれた名曲

春の庭を歩いていると、ふと気分が軽くなることがあります。学校や仕事が忙しくて頭がいっぱいでも、外に出て太陽の光を浴びるだけで、見えている景色が少し変わる。「Here Comes the Sun」は、そんな小さな解放感から生まれた曲です。作ったのはビートルズのジョージ・ハリスン。彼はギターを手にして、友人エリック・クラプトンの家の庭を歩きながら、曲のもとになるメロディーを思いつきました。大きな舞台や立派な録音スタジオではなく、庭でのひとときから始まったというところが、この歌の親しみやすさにつながっています。

ビートルズにも事務仕事があった

世界的なバンドというと、毎日ステージに立ち、自由に曲を作っているように思えるかもしれません。でも実際には、音楽以外の仕事もたくさんありました。ビートルズは自分たちの会社「アップル」に関係する話し合いや書類の仕事も抱えていたのです。ジョージは後年、当時のアップルが学校のようになってしまったと振り返りました。署名しなければならない書類があり、難しい話し合いもある。音楽を作りたいのに、机の前に座っている時間が長くなる。そんなある日、ジョージは仕事を休み、友人の家へ出かけました。そこで感じた自由さが、明るい曲の出発点になったのです。もちろん、仕事から逃げれば必ず名曲が生まれるわけではありません。ただ、気持ちを切り替えることが新しい発想につながる、という話としてはとても面白いですね。

冬が長い国の春

ジョージは、イギリスの冬がとても長く感じられることにも触れています。曇りの日や寒い日が続いたあとに春が来ると、太陽のありがたさをいつも以上に感じるものです。この曲の明るさは、単に「今日はいい天気!」という気分だけではありません。長かった冬が終わり、少しずつ温かい季節がやって来る、その変化が大切なのです。つらいことが続いても、ずっと同じ状態ではない。そんな気持ちを自然の変化に重ねて聴くこともできます。ただし、歌の感じ方に唯一の正解があるわけではありません。今日の天気を思い浮かべても、最近がんばった出来事を思い出してもいいのです。

ジョージ・ハリスンってどんな人?

ビートルズの有名な曲というと、ジョン・レノンとポール・マッカートニーが書いた曲を思い出す人も多いでしょう。ジョージもバンドのギタリストとして活躍していましたが、しだいに作曲家としても独自の魅力を発揮していきました。「Here Comes the Sun」は、そのジョージが書いた代表的な一曲です。ギターがすばらしく上手いだけでなく、短い音の並びで気分を伝えることができる。そんなところに注目すると、曲を聴く楽しさが増えます。音楽は、いつも大きな音や難しい演奏で人を驚かせる必要はないんですね。静かで親しみやすいメロディーでも、長く残る曲になります。

ギターの音が、朝の光みたい

曲が始まると、アコースティックギターの明るい音が耳に飛び込んできます。電気を使って大きな音を出すエレキギターとは違い、木の楽器が鳴るような温かな響きです。音が順番に動いていく様子は、雲の切れ間から光が少しずつ広がる景色にも似ています。もちろん、そんなふうに聞こえるのは一つの感じ方。でも、楽器の音が気分や風景を思い起こさせるのは、音楽の面白いところです。もしギターを弾くなら、曲を速くコピーする前に、最初の数秒だけを何度も聴いてみてください。一つひとつの音がどれくらい長く響いているか、音と音の間にどれくらい空間があるか。そこを意識するだけで、ただ音を並べるのとは違う表情が出てきます。

実は細かな工夫もたくさん

やさしく聞こえる曲だから、演奏もすべて簡単だとは限りません。「Here Comes the Sun」には、リズムの区切り方が少し変わる部分があります。数字で難しく考えるより、まずは曲に合わせて自然に手をたたいてみるといいでしょう。ずっと同じ速さで刻んでいるつもりでも、「あれ?」と感じる瞬間があるかもしれません。また、録音には当時の新しい電子楽器であるモーグ・シンセサイザーも使われています。シンセサイザーとは、電気の力でいろいろな音色を作る楽器のこと。温かなギターに少し不思議な音を重ねることで、曲の景色が豊かになっています。楽器を増やせば良くなるわけではないけれど、必要な音を丁寧に重ねることが作品の魅力を支えているのです。

『Abbey Road』で聴いてみよう

「Here Comes the Sun」は1969年のアルバム『Abbey Road』に入っています。『Abbey Road』には、同じビートルズでも雰囲気の違う曲が数多く収録されています。アルバムを順番に聴いていくと、一曲だけを聴くのとは別の発見があるでしょう。曲と曲の間に空気の変化があり、アルバム全体が一つの旅のように感じられることもあります。お気に入りの曲を見つけたら、前後の曲にも耳を向けてみる。それだけで、好きな音楽の世界が広がっていきます。

もう一度聴くなら

最初はギターの明るい音だけを聴いてみましょう。次は歌声の重なりに注目。そして最後に、曲の途中で加わってくる楽器の音を探してみてください。同じ曲でも、注目する場所を変えると新しい音が見つかります。「Here Comes the Sun」が教えてくれるのは、難しい理論の名前より、気分や景色を音楽に変えられるということかもしれません。庭の空気、春の日差し、仕事から離れたひととき。そうした日常の小さな場面が、世界中で愛される歌につながったのです。

名曲のひみつ・まとめ

もう一度この曲を聴くときは、曲が生まれた背景を思い出しながら、気になる音をひとつ探してみよう。