Fly Me to the Moon|最初の題名は「月へ連れていって」ではなかった
こんなところから始まった曲
「Fly Me to the Moon」を知っている人でも、最初からジャズのための曲だったのか、誰が作ったのかまでは知らないかもしれません。バート・ハワードが1954年に書いた作品。最初の題名は「In Other Words」。ケイ・バラードが同年に最初の商業録音を残し、1964年のフランク・シナトラ版はアポロ計画と強く結びついた。 いまでは何気なく流れてくる音楽も、生まれたときには当時の人々にとって新しい作品でした。まずはその出発点を知ってから聴いてみると、同じメロディーがちょっと違って感じられます。
この曲のいちばん面白いところ
宇宙を飛び回るような言葉が登場するのに、曲の中心は人を好きになる気持ち。大げさな空想を使って、伝えにくい思いを表現している。 曲には短い時間で覚えられる顔がありますが、その顔をどう見せるかは演奏する人によって違います。譜面に書いてある音をたどるだけではなく、音を長く伸ばすのか、少し急ぐのか、静かに始めるのかで、聴く人の印象は変わります。「正解の演奏は一つ」と考えず、いろいろな演奏を聴き比べると楽しさが広がります。
ジャズで演奏され続ける理由
ジャズでは、まず誰もが知っているメロディーを示し、そのあとに各楽器が自由なフレーズを加える演奏がよくあります。これを「アドリブ」と呼びます。覚えた歌を、友だちが自分なりの言葉で言い換えるようなものです。「Fly Me to the Moon」も一度聴いて終わりではなく、歌、ピアノ、管楽器などの違う版を楽しめる曲。楽器が変わるだけで、曲の表情はぐっと変わります。
ここを聴いてみよう
シナトラ版の軽快なリズムと、ゆったりした歌い方を聴き比べると、同じ曲が月夜の散歩にもダンスにもなる。 最初は何も気にせず聴き、2回目にひとつの音だけ追いかけてみましょう。ドラムがあるなら足で拍子を取ってみる、ピアノなら高い音と低い音を聴き分けてみる。歌があるなら言葉の切れ目にも注目してください。曲の説明を先に全部覚える必要はありません。自分の耳で一つ発見したら、それだけで十分です。
音楽って不思議
「Fly Me to the Moon」のように長く愛される曲は、ある時代の一つの作品でありながら、別の時代の人にも聴かれています。作曲家の思いを知る楽しさと、今の自分がどう感じるかは別のこと。古い曲だから難しい、と身構えなくても大丈夫です。演奏の雰囲気が好き、ピアノの音が好き、名前が面白い。入り口は何でもいいのです。
次の一曲を探すヒント
気に入ったら、同じ曲の別の録音をもう一つ選んでみてください。最初の演奏と比べると、テンポ、楽器、メロディーの飾り方などに違いがあります。今まで気づかなかった音が聞こえるかもしれません。曲を深く知るということは、専門用語を暗記することだけではありません。何度か聴き直して、そのたびに小さな発見を重ねること。その楽しさを「Fly Me to the Moon」から感じてもらえたらうれしいです。
ひとつのメロディーにも、生まれたときの物語と、演奏する人が加える新しい物語があります。曲の背景を知ったら、ぜひもう一度聴いてみよう。
同じ歌が、違う速さで踊りだす
歌詞の題名には「月」が登場しますが、まずは足元のリズムに注目。軽く跳ねるように聴こえる演奏と、ゆったり揺れる演奏では、同じ曲でも歩く速さが変わったように感じます。名曲は、一つの決まった演奏だけが正解ではないんです。
ボーカルのない演奏を聴いても、頭の中で歌詞を思い浮かべられるでしょうか。もし思い浮かべられたなら、そのメロディーはしっかり耳に残っているということ。演奏家が言葉なしで物語を語るところにも、ジャズの魅力があります。
※本文は編集初稿。歴史的事実の追跡確認、2,000字基準、動画の確認は最終校正で実施。