My Funny Valentine|「おかしな恋人」が、世界中のラブソングになった理由
こんなところから始まった曲
「My Funny Valentine」を知っている人でも、最初からジャズのための曲だったのか、誰が作ったのかまでは知らないかもしれません。1937年の舞台『Babes in Arms』で初めて歌われた。作曲はリチャード・ロジャース、作詞はロレンツ・ハート。劇中の「バレンタイン」は人の名前でもある。 いまでは何気なく流れてくる音楽も、生まれたときには当時の人々にとって新しい作品でした。まずはその出発点を知ってから聴いてみると、同じメロディーがちょっと違って感じられます。
この曲のいちばん面白いところ
恋人をほめる歌なのに、見た目や欠点にまで触れる少し変わった内容が魅力。最初から完璧な人を賛美するのではなく、不完全な人を大切に思う気持ちが曲に温かさを加えている。 曲には短い時間で覚えられる顔がありますが、その顔をどう見せるかは演奏する人によって違います。譜面に書いてある音をたどるだけではなく、音を長く伸ばすのか、少し急ぐのか、静かに始めるのかで、聴く人の印象は変わります。「正解の演奏は一つ」と考えず、いろいろな演奏を聴き比べると楽しさが広がります。
ジャズで演奏され続ける理由
ジャズでは、まず誰もが知っているメロディーを示し、そのあとに各楽器が自由なフレーズを加える演奏がよくあります。これを「アドリブ」と呼びます。覚えた歌を、友だちが自分なりの言葉で言い換えるようなものです。「My Funny Valentine」も一度聴いて終わりではなく、歌、ピアノ、管楽器などの違う版を楽しめる曲。楽器が変わるだけで、曲の表情はぐっと変わります。
ここを聴いてみよう
チェット・ベイカーのように小さな声で歌う演奏と、楽器だけで演奏する版を比べると、同じ旋律の表情が大きく変わる。 最初は何も気にせず聴き、2回目にひとつの音だけ追いかけてみましょう。ドラムがあるなら足で拍子を取ってみる、ピアノなら高い音と低い音を聴き分けてみる。歌があるなら言葉の切れ目にも注目してください。曲の説明を先に全部覚える必要はありません。自分の耳で一つ発見したら、それだけで十分です。
音楽って不思議
「My Funny Valentine」のように長く愛される曲は、ある時代の一つの作品でありながら、別の時代の人にも聴かれています。作曲家の思いを知る楽しさと、今の自分がどう感じるかは別のこと。古い曲だから難しい、と身構えなくても大丈夫です。演奏の雰囲気が好き、ピアノの音が好き、名前が面白い。入り口は何でもいいのです。
次の一曲を探すヒント
気に入ったら、同じ曲の別の録音をもう一つ選んでみてください。最初の演奏と比べると、テンポ、楽器、メロディーの飾り方などに違いがあります。今まで気づかなかった音が聞こえるかもしれません。曲を深く知るということは、専門用語を暗記することだけではありません。何度か聴き直して、そのたびに小さな発見を重ねること。その楽しさを「My Funny Valentine」から感じてもらえたらうれしいです。
ひとつのメロディーにも、生まれたときの物語と、演奏する人が加える新しい物語があります。曲の背景を知ったら、ぜひもう一度聴いてみよう。
ほめ言葉だけじゃないラブソング
この曲のおもしろさは、題名だけで意味が決まらないことです。「素敵だね」と言い切るより、相手の不完全な部分まで見つめる歌として聴くと、少し照れくさい、でも深い気持ちが伝わってきます。
歌う人によって、語りかける相手との距離まで違って感じられます。ささやくような声なら目の前の一人に話しているように、力強いトランペットなら遠くの人に思いを届けているように聴こえる。音色の違いを比べると、歌詞を全部知らなくても物語を感じられます。
※本文は編集初稿。歴史的事実の追跡確認、2,000字基準、動画の確認は最終校正で実施。